火星儀
火星儀は、いま地球のほうを向いている火星の面を、実際の計算で描くページです。月と違って火星の自転は地球と同期していないので、向いている面は刻々と変わります。今夜望遠鏡を向けたときに大シルチスが見えるのか、それとも反対側なのか——それをあらかじめ確かめるための道具です。
この章では、火星の回し方と実時刻の面に戻る方法、観測夜の中で時刻を動かすこと、地名ラベルとレイヤー、そしてリンクで特定の火星を指す方法を扱います。
いま向いている面から始まる
ページを開いたとき正面に来ているのは、いまこの瞬間に地球へ向いている面です。中央経度(CM)の行がその経度を示しています。適当な向きではなく、望遠鏡を向ければそこにあるはずの面です。
ドラッグすれば自由に回せます。裏側も、極も見に行けます。自由に見ている間は画面の下に正面という表示が出て、いま画面の中央にある経度を教えてくれます。もとの面に戻りたくなったら今に戻すを押してください。滑らかに実時刻の向きへ帰ってきます。何周回していても最短の向きで戻るので、迷子になる心配はありません。なお今に戻すが直すのは向きだけで、拡大の具合はそのままです。
ホイール(スマートフォンではピンチ)で拡大できます。ただし火星は月ほど大きく見える相手ではありません。画面左上に出ている小さな図が、そのことを黙って示しています。破線の丸が満月の見かけの大きさ、その内側の3つが、いまの火星を50倍・100倍・200倍に拡大したときの大きさです。最良の接近でも、200倍にしてようやく肉眼の満月と並ぶ——それが、実際に望遠鏡を覗いたときに見えるものの目安です。

左上の目安。破線が満月の見かけの大きさで、内側は火星を50倍・100倍・200倍にしたもの。
観測夜をたどる、次の接近を待つ
日時の下にあるスライダーは、観測夜のスクラブです。今日の日没から翌朝の日の出までを端から端まで動かせます。これを一往復させると、この機能の要点が出ます——火星の1日は24時間37分あるので、一晩のうちに面は10度以上も回ります。夜のはじめに見えていた地形が、明け方には縁へ寄っている。何時に望遠鏡を出すかで、見えるものが変わるということです。
それ以外の日時を見たいときは、上の入力欄に直接打ち込みます。1900年から2100年までが範囲です。現在を押せば、いまに戻ります。
パネル下部には10行の数字が並びます。中央経度(CM)と中央緯度(De)が、いまどの面のどのあたりを正面から見ているか。視直径・距離・等級が、どれくらい小さく、どれくらい遠く、どれくらい明るいか。太陽黄経(Ls)と季節とダストシーズンが、火星のいまの季節。そして次の衝は、次に火星が地球に近づいて大きく明るくなる日です。視直径の行と次の衝の行を見比べてください。いまが観測に向いた時期なのか、それとも待つべき時期なのかが、そこで分かります。
レイヤーを開くと火山が出てくる
最初に出ているラベルは、アルベド地形と着陸地点だけです。アルベド地形というのは、望遠鏡で見たときに濃淡として見える古典的な模様——大シルチスや太陽の湖といった、19世紀から名前のついている領域のことです。つまり既定の火星儀は「望遠鏡から見た火星」の側に寄せてあります。
オリンポス山やマリネリス峡谷が見当たらないのは、そのためです。これらはレイヤーの地形に入っています。チェックを入れると、太陽系最大の火山も、大陸ほどの長さがある谷も、名前つきで現れます。解説のある20か所のうち12か所がこの地形に属しているので、読みものとして見るなら、まずここを開いてください。
名前に点線の下線が付いているものは、押すと解説カードが開きます。規模と座標、参考資料、そしてその地形についての文章が読めます。下線のない名前は押しても反応しません——解説をまだ書いていないためです。どこに解説があるかを名前で見るには、解説から探すのリストを使ってください。カードは開いたまま球を回せますし、日付を動かしても、今に戻すで向きを戻しても閉じません。
2つの表示切り替えも覚えておくと便利です。極冠を外すと、白い冠のない地表そのものが見えます。ただしこの極冠はLsから起こした近似モデルで、実際の砂嵐や雲の状態を映したものではありません——その旨はチェックボックスのすぐ下に常に書いてあります。もう一つの全面表示(均一光)を入れると、夜側を含めて球全体が均等に照らされます。火星は地球から見るかぎり大きく欠けることのない相手なので、これを使わないと裏側の地形は確かめられません。入れている間は、これは実際の照明ではないという注意書きが出続けます。

既定の火星儀。望遠鏡で見える濃淡——大シルチスのようなアルベド地形に名前が付く。

レイヤーの地形を入れたところ。オリンポス山もマリネリス峡谷も、ここで初めて名前が出る。